所蔵仏像

本尊薬師如来坐像及び両脇侍

 寺伝によると、弘仁6(815)年天台宗の開祖伝教大師が国内布教の折、この地に立ち寄った際、この地に疫病(えきびょう)がはやり悩む民人が多かったのを哀れみ、桜の古木で自ら薬師如来像を刻(きざ)み、願興寺の前進となった草庵(そうあん)に安置したのがこの本尊像とされているが、その尊容から判断するに、鎌倉時代初頭の作と考えられている。
 薬師如来は左手に薬壺(くすりつぼ)を持っている(あるいは、左手薬指が内側に曲がっている)容姿で、この薬の効能によりあまねく衆生(しゅうせい)を救済する利益深い仏である。

 薬師本尊の両脇侍像(りょうわきじぞう)の日光菩薩像、月光(がっこう)菩薩像ともに平安末の様式を保った尊像で、その作は本尊薬師如来坐像より若干古いとされ、本来は別の仏像として奉納・安置されていたものを日光・月光菩薩として修補し、本尊の眷属(せんぞく)として新たに安置したものと考えられている。
 日光・月光菩薩は薬師瑠璃光浄土(やくしるりこうじょうど)の代表的な菩薩で、日光菩薩は際限のない徳を、月光菩薩は衆生に生死の煩悩(ぼんのう)を離れさせる働きを持つと言われている。
 日光・月光量菩薩ともに非常に大型の尊像であり、本尊薬師如来は座高163センチ、日光・月光菩薩立像の像高197センチある。

 ちなみに、願興寺の伽藍が整備されたと言われる、長徳4(995)年のまでの間に、一条天皇の皇女(得度して行智尼)の仏得により尼ヶ池より湧出(ゆうしゅつ)した1寸8分ほどの金色の薬師如来像が、本尊薬師如来像の中に安置されているとの伝承がある。

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本尊仏薬師如来坐像と月光・日光両菩薩



四天王立像



広目天   多門天   増長天   持国天
 四天王は、それぞれ須弥山の中腹で「持国天」は東方の門を、「増長天」は南方の門を、「広目天」は南方の門を、毘沙門天(多聞天)は北方の門を守っている。
 当山の四天王像は桧材の寄木造りで、表面に乾漆を盛られ、各像ともいたって動きが少なく静かな姿を示し、雄大で力のこもった面相である。像高は242センチほどで、増長天と多聞天は邪鬼を踏みつけ、持国天と広目天は岩座の上に立っている。

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十二神将立像

 薬師本尊を中心とした仏教の世界は、日光・月光菩薩、四天王のほかに十二神将が周囲を取り巻くもので、願興寺にはこの十二神将も一体もかけることなく現存している。
 十二神将はまたの呼び方として、十二夜(薬)叉とも言い、薬師如来の眷属(けんぞく)である。薬師の十二の大願に応じて現れる薬師の分身とも言われている。
 十二神将それぞれ七千の眷属を率いているといわれ、その数は全てで八万四千、衆生が抱える煩悩八万四千を全て救済するとされている。像高は114センチ前後である。
 時を守護する神であり、平安持代以降の神将像の頭頂部には干支が刻まれることが多くなっている。 

    毘羯羅大将(ビカラ)…  子   招杜羅大将(シャトラ)… 丑    真達羅大将(シンダラ)… 寅
 

   摩虎羅大将(マコラ)…  卯   波夷羅大将(バイラ)…  辰    因達羅大将(インダラ)… 巳

   珊底羅大将(サンテラ)… 午   あに羅大将(アニラ)…  未    安底羅大将(アンテラ)… 申

   迷企羅大将(メキラ)…  酉   伐折羅大将(バサラ)…  戌    宮毘羅大将(グビラ)…  亥



上の画像をクリックすると願興寺所蔵の十二神将が順に表示されます。

釈迦如来及び両脇侍と木造阿弥陀如来像

釈迦如来及び両脇侍
 全国的にもその数が少ない説法印(せっぽういん)を結ぶ釈迦如来像で、願興寺の重要文化財中唯一尊像の膝裏に「寛元二(1244)年甲辰五月二三日造立之 仏師僧覚俊勧進上人観西 大檀那源康能秦氏 少仏師定仏」との銘があり、その造立が鎌倉期で地元の有力武将纐纈氏によるものであることが判明している。脇侍の象に乗る普賢菩薩坐像(ふげんぼさつざぞう)、獅子に乗る文殊菩薩坐像(もんじゅぼさつざぞう)ともに地方の仏教芸術の中での至宝と評されるものである。
 釈迦如来はその名のとおり、仏教の開祖である釈尊そのものを指し、願興寺のそれは自らが悟った教えを弟子に説いているときの姿を表現したものである。釈迦如来坐像の両脇にある像の背に乗る普賢菩薩は、普遍の法門つまり仏の理性を示す尊像で、仏の菩提をかたくななまでに守る姿を現しており、獅子の背に乗る文殊菩薩は、知恵を司ると言われる尊像である。

木造阿弥陀如来坐像と立像
 阿弥陀とは量ることのできない無限・無量を意味する。仏の教えを学び、修行し出家したインドの王族の太子で、48の願いをおこし、その願いを成就し仏となったと伝えられる。西方極楽浄土の教主として、念仏をおこなうものは必ず往生できるとの教えを広めたとされ、衆生から極楽往生を願い厚い信仰を集めている仏である。 上品上生印を結ぶ阿弥陀如来坐像で、像高82センチある。平安時代の様式を色濃く残した作風であるが、願興寺の諸尊像と同様鎌倉期の作である。運慶作との伝承あり。

      
釈迦如来及び両脇侍 阿弥陀如来坐像と立像
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の仏像編をご覧ください。
干支の子年ごとに本尊開帳をしております。拝観は、ご希望の時は、願興寺までお電話にてお申し込みください。拝観料500円にてお受けいたしております。
   願興寺  0574(67)0386
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